Pidoniaの世界へようこそ

私の標本箱から (31)

フタスジカタビロハナカミキリ(Brachyta bifasciata japonica)♂ 高知県梶ヶ森 alt.1000m 5.ⅴ.1973



本種は春一番を彩る人気のハナカミキリで、その愛らしい姿から「キマル」の愛称でも親しまれており、花粉まみれでヤマシャクヤクの花に鎮座する姿は、カミキリ生態写真の中では定番中の定番である。

私がこの素敵なキマルちゃんを初認識したのは、1969年発行のカミキリ生態図鑑(保育社)であった。その生態写真の現場が、あろうことか我が郷里の梶ヶ森であったことから、当然この虫を求めて参戦することになる。初めてGWの梶ヶ森を訪れたのは1971年のこと。虫は夏に採るもの!との認識がまだ私の頭の中に根強く残っていた当時、果たしてこんな時季に本当にいるのだろうか!?との思いを胸に、それでもセスジヒメハナやフタオビノミハナといったピドニアとの初遭遇もあって、さほど惨敗感もないままに帰還することとなる。当然のことながら翌年も出撃し、当時高知県未記録のカエデヒゲガナガコバネをネットインして少しは息巻いてみたものの、相変わらず本種には遭遇できないままだ。

初めて彼らと遭遇できたのは、その翌年、1973年のことである。友人のM君と共にポイント界隈のブッシュに分け入り、林床にひっそりと花開くヤマシャクヤクを一つずつ覗いていくのだが、花を見つけるたびに鼓動が高鳴るものの、そう簡単にはその姿を拝むことが出来ない。前年初採集を果たしていたM君は余裕の表情で私を応援してくれていたが、汗ばむほどに時間が経過する中、遂にその時が!・・・やった、いたぞ~!

ところが、これが素直に喜べない。何故か私の初遭遇個体は上翅に大きな穴が開いていて、見るも無残な姿をさらしているではないか。何故!?鳥か何かに襲われたのか!?とにかくこの時は嬉しさよりも残念な気持ちの方が勝ってしまい、まともな個体を採るまで今日は帰れないぞ!との思いで更に奥へとブッシュをかき分けながら探索活動を継続した。結局この日、何とか良品1頭を追加して記念すべき一日を終えたのであるが、この残念な個体、もちろん貴重な初採集記念標本として、私の標本箱の中にしっかり居場所を確保している。

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