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私の標本箱から (27)

オニホソコバネカミキリ屋久島亜種(Necydalis gigantea akiyamai)♂ 鹿児島県屋久島町 7.ⅶ.2022 



個人的に2022年シーズン最大のトピックは、「私の標本箱から(22)ヒミコヒメハナカミキリ西九州亜種」でご紹介した福岡県在住・Tさんの手によるこの個体である。もはや屋久島の2大ネキとは一生無縁で終わるものと思っていた矢先、ヤクネキ狙いで三度目の渡島を果たした彼から吉報が届いたのは7月7日の七夕の日であった。現地の彼から、採集直後のネット側面に静止するアキヤマイの写真が送られてきたのだが、まさかこの貴重な個体を私宛送ってもらえるなんて思ってもみなかったので、何はさておきこの個体が2022年最大のトピックと相なったような次第。

実は私も屋久島には一度だけ出かけたことがある。大学に入った1975年、満を持して現地に足を踏み入れたものの、前期試験を全て受けてからの出発となったため、現地に着いた段階で、時すでに遅し。当時ヤクネキは7月上~中旬がベスト!と聞いていたので、半ば諦めの心境ではあったものの、そうは言っても一縷の望みを抱いて訪れた白谷林道終点で知らされたのは、案の定「ネキはもうお終いだね」の一言であった。早くから現地入りしていた知人3人は夫々1~数頭のネキを仕留めていて羨ましいことこの上なかったが、確かに結果的に私の到着日以降吹き上げポイントではネキは採れずじまいであった。

ところがその数日後、日中あまりの暑さに林道終点の機械小屋の屋根の下で数人とだべっていたところ、その中を一頭の寄生蜂?がゆっくりと通過した。誰もが気にもかけずそのままスルーしたのだが、やがてその個体が反転して我々のところに舞い戻ってきたのである。うるさい蜂だなぁ~とネットを振ったAさんから「ぎゃっ、ネキだ!!」などという想定外の言葉が発せられようとは、誰が想像できようものか!?むろん私を含めその場にいた面々は、ただただ唖然!呆然!・・・でしかなかった。

かくしてこの個体は、当時カミキリ界の第一人者であった林 匡夫博士の下に届けられ、晴れて屋久島亜種として彼の名が残ることになったような次第。タイプ標本などと言うととても敷居を高く感じてしまうものだが、その採れ方などは往々にしてこんなもの・・・なのかもしれない。


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