Pidoniaの世界へようこそ

私の標本箱から (18)

左:アワヒメハナカミキリ(Pidonia ogasawarai)♀ 徳島県木沢村高城山 alt.1,350m 20.ⅵ.1998
右:フタオビヒメハナカミキリ(Pidonia puziloi)♀ 徳島県山川町高越山 alt.1,100m 17.ⅵ.1995


今日現在、四国産ファウナに最後に追加されたPidoniaはアワヒメハナ(アワノミハナ)である。これまで永らく四国のOmphaloderaはフタオビヒメハナ(フタオビノミハナ)だけと信じられてきた経緯があり、その一方で四国の高標高域で見られる個体群は低山地のものとは微妙に差異が認められる、との意見や噂話が絶えなかったのも事実である。そうした永年の懸案への最終回答がアワヒメハナの記載(2015)で、積年の精査・研究の末、ピドニア研究の第一人者である窪木幹夫氏により報告された。

両種の差異についてよくご質問をいただくが、上写真の如く、前胸背の形状(アワは側部中央がより強く突出)や色味(アワは前後縁がしばしば黄褐色、フタオビは概ね全体黒褐色)、アンテナ・脚の太さと長さ(アワの方が長くスレンダー)、上翅微毛の状態(アワはより高密度)等々、両種の外部形態上の差異を確認することが出来る。

私など、かなり多くの時間を四国の住人として過ごしていながら、永年四国に分布するOmphaloderaはフタオビヒメハナ一種と思い込んでいたことから、私自身に献名いただいた貴重な種であるにもかかわらず、実は手許には良い状態の標本が僅かしかない、というお恥ずかしい状況で、産地に行きさえすれば多くの彼らに遭遇することが出来ていただけに、今となってはとても後悔をしているような次第。

最後に、アワヒメハナの地域変異例として、三産地の標本をご紹介したい(いずれも♂個体)。
・写真左:徳島県東祖谷山村剣山産 3.ⅷ.1974 (頭部から前胸背が概ね黒褐色の標準タイプ)
・写真中:愛媛県西条市よさこい峠産 25.ⅶ.1996 (頭部~前胸背が赤褐色化する石鎚山タイプ)
・写真右:高知県本川村寒風山産 29.ⅵ.1983 (頭部~前胸背が赤黄褐色化する最も明るいタイプ)
⇒この個体などフタオビヒメハナの雰囲気は一切なく、限りなくニセフタオビヒメハナに近い印象。


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