Pidoniaの世界へようこそ

長野県上田市武石峠 alt.1,500~1,700m 16.ⅶ.2010

中信高原の中では最も著名な美ヶ原の少し北方に、松本市と立科町方面を結ぶ峠道がある。武石峠、これで「たけしとうげ」と読むが、海抜は1,800mほどで、ピドニア採集には申し分のない標高だし、そもそも当時は未だ中信高原山塊でピドニアを採集した経験がなく、果たしてどんな顔ぶれがどのような地域変異を見せてくれるのか、興味津々で出かけてみた次第。

恒例のピドコメツアー中であった私たちは、前日の午後、奥日光から一気に佐久まで移動し、ここで前泊。当日は意気揚々と立科町(東)側から武石川に沿って峠を目指した。標高1,500m辺りから花を見かけるたびに降りては掬ってみるが、ミヤママタタビの花からニセハムシハナが採れたくらいで、なかなか面白いピドニアには巡り逢えない。


そうこうしている内に、いつの間にか峠と思しき地点に到着。道中を含め、環境的にはほぼ植林で埋め尽くされ最悪である。やむなく王ヶ頭方面への支線に入ったり、美ヶ原林道を少し松本市方面に下ったりもしてみるが、この辺りはどこもかしこも観光地化されていて、ピドニアを探す環境としては全くもって感心できない状況であった。


かくして、ここでの採集を諦め元来た道を戻り始めた時、カラマツだらけの林の中に一本だけ満開のニシキウツギを発見し、これを掬ってやっと期待していたニッコウヒメハナに遭遇。本亜種としては限りなく分布西限に近いこの地での地域変異に興味があったことから、この樹で粘って数を稼ぎ、結果的には概ね八ヶ岳山系産と同様、頭部から前胸背が赤味を帯びる個体群であることを確認して、この地における懸案が一つ解決できたような次第。


実はこの日、当初は別の場所に出向く予定であったのだが、梅雨明け直前の天候不良に付き、日和って道路沿いで採集のできるこの地を選択したのだが、結果的には僅か一本のニシキウツギに救われた一日となってしまった。

2010年7月16日の遭遇種
・ホソガタヒメハナ P. semiobscura
・ニッコウヒメハナ P.limbaticollis


・キベリクロヒメハナ P.discoidalis
・ブービエヒメハナ P.bouvieri
・オオヒメハナ P.grallatrix(目撃)
・ヨコモンヒメハナ P.insuturata
・ムネアカヨコモンヒメハナ P.masakii
・オヤマヒメハナ P.oyamae
・チャイロヒメハナ P.aegrota(目撃)

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