Pidoniaの世界へようこそ

山形県東根市間木野~白髭山(柳沢林道) alt.400~1,050m 17.ⅵ.2016

20世紀最後の10年間を赴任先の四国・高松で過ごした私は、首都圏に戻って以来もっぱら関東~中部山岳エリアを軸にピドニア散策を続けていたのだが、その北方に繋がる東北エリアにはなかなか触手が伸びないでいた。2007年に初めて赴いた宮城蔵王で、東北特産の2種(ミチノクヒメハナ・トウホクヒメハナ)をすでに採集していたのが大きな要因であったが、やはり普通種であっても各地域・各山塊の個体群を見てみたい!との思いが徐々に募り、初めて山形県の調査に臨んだのが2015年の7月である。とは言え、7月半ば過ぎの山形県下はすでにノリウツギが開花するなど盛夏の趣きさえ漂っており、ことピドニアに関しては十分な成果を見ることなく消化不良の面持ちで帰還することとなった。

そのリベンジ決戦に出かけたのが翌2016年の6月、前年には完全に終わってしまっていたミズキやタニウツギの開花期を狙っての再調査行である。最初に挑んだのが船形山山系の白髭山で、山形盆地から見ると北東に位置する山塊に当たり、南東の蔵王山塊、北西の月山山塊、南西の朝日山塊と共に注視していたエリアだ。

前年同様標高1,050mの登山口まで延びる林道を進み入るが、案の定この時季はミズキとタニウツギが満開で、これを掬いながら匍匐前進で標高を稼ぐ。トウホクヒメハナ、ミチノクヒメハナなど順調に成果を挙げるが、ここで採れるセスジヒメハナは林道入り口の間木野付近で採れた個体群とは随分雰囲気を異にしていた。


帰宅後じっくり調べて判明したことだが、入り口付近(標高400m)で採れたのは二次林環境下でも見られるいわゆるモリセスジで、林道深部で採れた個体群にはさらに別の2種が混生しているようで、どうやら個体数の多い方が山形県からは未記録のキタセスジ、少ない方がブナセスジのようだ(キタセスジの記録は後日月刊むし誌に投稿)。つまりここは、結果的にセスジヒメハナ種群が実に3種も同時に見られる、実に貴重なフィールドなのであった。


このように、採集当日には気がつかなかったセスジヒメハナ種群の面白くも貴重な成果を人知れず携え、この山形調査ツアーはさらに翌日以降も月山山塊~朝日山塊~蔵王山塊へと続くのであった。

2016年6月17日の遭遇種(一部2015年の記録)
・トウホクヒメハナ P.michinokuensis
・オオヒメハナ P.grallatrix(2015年のみ)
・キタセスジヒメハナ P.kurosawai


・セスジヒメハナ種群の一種 P.amentata系 sp.(ブナセスジと称されている種)


・セスジヒメハナ種群の一種 P.amentata系 sp.(モリセスジと称されている種)


・ミワヒメハナ P.miwai
・ミチノクヒメハナ P.hamadryas

左:ミワヒメハナ雌、右:ミチノクヒメハナ雌

・ムネアカヨコモンヒメハナ P.masakii
・チャイロヒメハナ P.aegrota(2015年のみ)
・フタオビノミハナ P.puziloi


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