Pidoniaの世界へようこそ

福島県福島市鳩峰峠(一部宮城県刈田郡七ヶ宿町) alt.450~800m 21.ⅵ.2018

国内におけるピドニアの最大産地は、言うまでもなく中部山岳地帯である。ここには30種近いピドニアが分布しているものの、ご承知の通り北に行けば行くほど、西に行けば行くほどに、その種類数は減じてしまう。つまり、そのどこかに分布の北(東)限や西(南)限があるはずで、それを探索するのもピドニアの愉しみのひとつと言える。

例えば、Cryptopidonia亜属の代表種であるヨコモンヒメハナは、その北限が福島県吾妻山系の幕川温泉と言われており、しかもこの北限ヨコモンヒメハナは前胸背が赤味を帯びるという、知る人ぞ知る特殊な個体群として異彩を放っているのだ。

ところがある日、たまたま目にした文献で想定外の一行を目にした。田添京二・大桃定洋両氏による「福島市周辺のカミキリ」さやばねNo.3(1977)である。これによれば、なんと福島市の北方山地にもヨコモンヒメハナが分布する、と。事実ならばもちろん北限伸長、これは何としてでも確かめなくては!

かくして2018年6月、計画を実行に移した。目的の地は福島・山形・宮城の三県境に位置し、首都圏から虫屋の出向くことなどまず考えられない一帯である。そもそも標高もそれほど高くはないし、特段この地域特有の珍種が採れるといった類の話も聞いたことがない。しかし、そんな状況こそがピドニア探索の愉しみであり、果たしてどんな面々と遭遇できるのか!?本当にヨコモンヒメハナはいるのか!?期待を胸に飯坂温泉から北に向かう国道を走り抜ける。


この国道、峠の手前で一瞬だけ宮城県に突入するのだが、その辺りのクリの花から待望のCryptopidoniaがネットに入るも、残念かな、いずれもニセヨコモンヒメハナに化けてしまった。先を急ぎ、標高800mの峠に近づく辺りからミズキやタニウツギが見られ始め、これを掬いながら目的の峠に至ったものの、国道はこれにて終点。その先はゲートで堅く閉ざされており、山形県側には進み入ることの出来ないピストン国道となっていた。これでは道中の往来が少なかったのも頷ける。


結局この日一日かけて辺り一帯を走り回ったものの、期待のヨコモンヒメハナとの遭遇は叶わなかった。後日、かの文献著者の標本がT氏のところにきていることを伺った私は早速T氏に標本の確認をお願いしたものの、残念かな、かの報文の記載根拠となる標本は見つかることなく、真実は今もって霧の中となってしまっている・・・。

2018年6月21日の遭遇種
・トウホクヒメハナ P.michinokuensis
・ナガバヒメハナ P.signifera

左:トウホクヒメハナ、右:ナガバヒメハナ

・アサマヒメハナ P.takechii
・キベリクロヒメハナ P.discoidalis
・ミワヒメハナ P.miwai
・セスジヒメハナ種群の一種 P.amentata sp.(モリセスジと称されている種群)
・ニセヨコモンヒメハナ P.kaguyahime(旧 P.simillima)


・ムネアカヨコモンヒメハナ P.masakii
・チャイロヒメハナ P.aegrota
・フタオビノミハナ P.puziloi




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