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私の標本箱から (38)

シリブトジョウカイ属の一種(Yukikoa sp.)♀ 群馬県水上町土合 20.ⅵ.1982



いかにも奇怪な格好をしたジョウカイである。
当日は上野駅待ち合わせで、今や鬼籍に入られたT氏と共に現地に赴いた。9時半過ぎには地下トンネル駅として有名な土合駅に到着し、これより徒歩で川に沿う林道を進み入る。途中ゴトウヅルの花からPidoniaが得られるも、叩き網にはロクに虫が落ちてくれない(でも、幸いなことにこの虫が採れた!)。やがてブナの立ち枯れでマダラゴマフや、ミズキの花からエゾトラの入るラッキーもあったりと、成果の方はまずまずだったものの、お天道様がご機嫌うるわしくなく、最後は突然の土砂降り豪雨に追われるように退散を余儀なくされてしまった。

さて、このシリブトジョウカイ、なかなか厄介なグループのようだ。当該個体も、採集後暫くは気にも留めず放置していたが、やがて雑甲虫も面白そうなものから順次マウントするようになり、ある日タトウの中に鎮座しているこの虫に再会。見てくれは見ての通りで、薄っぺらで下膨れのいかにも不細工な格好をしている。それでも、この類はたいそう珍しいグループのようで、いろいろ調べてみると、今日現在の知見では本州限定で異所的に12種ほどが知られるようだ。岡山のマニワシリブトジョウカイ(以下シリブトジョウカイは略)、兵庫・岡山のオンズイ、京都・大阪のキイロ、三重のアキタ、滋賀のミズノ、福井のマエグロ、以上が西日本の面子で、東日本からは、小谷(長野)のマサタカ、雨飾山(長野)のカメザワ、南ア北岳(山梨)のカネコ、群馬・埼玉・東京(関東山地)のワタナベ、守門岳(新潟)のスモンダケ、神奈川のオクダ・・・以上が既知種の全て。

ならば、群馬県土合(三国山地の谷川山系)産はどの種に相当するのか?と言うと、どの既知種にも属さない未記載の不明種と言える。群馬県という単位でみればワタナベが存在するが、これは関東山地産を指しており、このグループの分化状況を鑑みると、三国山地産は恐らくはこれらとは別モノである可能性が高そうだ。結局、これまでに蓄積されたほぼ全ての記録を網羅してもなお、今回の採集地周辺での記録は見つからず、結局は不明種Yukikoa sp.として解釈するしか無いのが、今現在の精いっぱいの落としどころなのだ。
果たしてこの個体、どなたか専門家の方に詳しく調べてはいただけないものだろうか!?



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