Pidoniaの世界へようこそ

私の標本箱から (07)

オオヒメハナカミキリ(Pidonia grallatrix)♂ 長野県上伊那郡宮田町木曽駒ヶ岳 alt.1,900m 21. ⅶ. 2017 ヤグルマソウ花上




写真上左は、よく知られた九州産のS紋を欠くタイプ。写真上右は、最近中央アルプスで採集した同じくS紋を欠く個体で、個人的には本州産でここまで完全にS紋の焼失したタイプを見たのは初めてであった。採集した瞬間すぐにそれと分かったが、オオヒメハナをネットインして嬉しく思ったのは、本種を初めて採集した日以来だったかもしれない。
ちなみに写真下の個体は、写真上右の個体と同日・同場所で採集した、ごくごく通常の個体。

実は、より身近なところにも本種に関し少なからず気になっている山がある。富士山の北側に位置する山梨県富士河口湖町三ツ峠山。ここの個体群は、どうも全体的に小型・短太、且つS紋の発達程度が弱い傾向があるように感じているからだ。
下の写真は、その三ツ峠山産の♂2頭。左の個体はS紋の発達が弱く、通常個体の写真右と比べても、その程度をご理解いただけるものと思う。



同じく、同産地の♀2頭。やはり左の個体はS紋の発達が弱く、しかも上半はほぼS紋を欠くと言っても過言ではない状態。右の通常個体をも含め、何故かここのは小ぶりで短太な印象の個体が多い気がする。



ピドニアの面白さ(難しさ)は、個体変異と地域変異がマトリクスで効いてくる点にあるのだが、その個体変異とは、これまでは、①斑紋変異、②色彩変異の二つを指すことが主だったものの、今回の例の如く、③形態変異まで顔を出すとなると、いよいよもってその難解度(面白さ)が増すことになってしまいそうだ。

以上、日頃からほとんど気にも留めることもないこうした普通種であっても、別の視点で眺めてみると、まだまだ我々が気づいていない面白い事象や事実に遭遇することが出来る・・・かもしれない。

<< 前のページに戻る

↑ PAGE TOP