Pidoniaの世界へようこそ

私の標本箱から (12)

ヨコモンヒメハナカミキリ(Pidonia insuturata)♂ 新潟県魚沼市浅草岳 alt.750m 8. ⅶ. 2018

本種は本州中部から紀伊半島にかけての温帯林帯に広く分布する丸型ピドニア(Cryptopidonia亜属)の代表選手で、同一亜属内の近似種とは前胸背の形状で簡単に区別することのできる、比較的分かり易いピドニアである。

信州方面や関東山地などで採集を行っていると、その発生期にはほぼ確実にお目にかかることができる輩でありながら、その地域差についてはあまり論じられることがないようだ。実際、一般に黒色とばかり思われている本種の♀腹面が、実は地域によっては赤黄褐色を呈することも知られているし、また本種の北限個体群(福島県幕川温泉産)は前胸背が赤味を帯びることでも有名だ(ピドニア界では…)。

特にピドニアに関しては、本州の表側・裏側とで随分と種の構成や同一種内でも形態(体形や斑紋など)が異なり、その幕川温泉産が太平洋側の北限個体群とするならば、今回の産地は日本海側の北限地に相当するもので、まさにこの個体こそが日本海側の北限をより北に伸長させた張本人なのである。

咲き始めのオニシモツケの花に飛来した本個体、残念ながら採集した時点で右中脚が欠損していたが、むろんそれによって記録の価値が損なわれることはない。意を強くし、翌年改めて確認調査に入ってみたものの、残念ながら本種との再会は叶わなかった。ピドニア属においては、分布地の縁で特異な形態的特徴を示すようなケースもまま見られるので、この地(可能ならもっと北)の♀個体にも是非巡り会いたいと思っているような次第。





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